「おにいちゃん。いつまで手を繋いでいたらいいの?」 「手のひらの赤がおちるまでだよ」 「おにいちゃん。いつまで手のひらの赤を隠せばいいの?」 「10年後、時効がくるまでさ」 お菓 子 の家 密 室 殺人事 件。 壁はクッキー、屋根はチョコレイト、煙突は飴。 家の家具も何もかも、その家はお菓子で出来ていた。 その家の中には忙しなく大人たちが動き回る。 写真を撮ったり、指紋を採ったり。 その大人たちは警官である。 この家の持ち主は死んでしまった。 殺されたのだ。 お菓子の家のお婆さんは、密室の中で殺された。 密室殺人事件である。 家の中にいた子ども達は、お婆さんの家に惹かれて集まった子ども達だ。 警官は、丁寧に取調べをする。 「お婆さんはどのくらいお菓子を作っていたの?」 「誰かお婆さんが何していたか知っているかな?」 「お婆さんはこのナイフで刺されたんだ。犯人の手にはべったりと血が付いているに違いないよ。 血が付いている人しらない?」 少年たちは口々に答えた。 「うーん。たっくさん。家をお菓子にしたくらいだからね」 「お菓子作ってたんじゃないかな。他の事してるところ見たことないよ」 「血なんて知らない。いちごジャムならついているけど」 子ども達の証言など当てにならない。 わらわらと集まる子ども達の中に、お互い手を繋ぎあった兄妹がいた。 「おにいちゃん」 「大丈夫、大丈夫だよ」 二人はきつく、手を握り合った。 顔色が良くない。 そんな二人を心配して、一人の警官が近づいた。 「大丈夫かい?君達気分でも悪いのかな」 よく太った、優しそうな人だった。 兄の少年は、大丈夫、と言って、その警官を振り切る。 言える訳がない。 お菓子の家を見つけたのは偶然だった。 家出してきた二人は、お腹が空いていた。 出てきたお婆さんは二人に沢山お菓子を用意した。 こんなにケーキが食べられるなんてなんて素敵なんだろう!! しかし、二人は思ったのだ。 どうせこの人も大人。 自分達の両親のように醜い心を持っているに違いない。 お菓子の家さえあればいい。 お婆さんにねだる必要は無い。 奪ってしまおう。 気が付いたら二人、ナイフを握り、 お婆さんは死んでいた。 血で汚れた手を互いに握り合って隠した。 捕まるもんか。 二人で逃げ切ってみせる。 「絶対に言ってはいけないよ」 「うん」 「手を放してはいけないよ」 「わかった」 お菓子の家は少年達に譲歩されるらしい。 もし他の大勢の少年達が、家を独り占めしようものなら、 また殺してしまえば良い、兄は思った。 (僕ら兄妹が幸せなら誰が死のうと構わない) 時効まであと10年。 手のひらの血を隠し通してやる! 殺人に手を染めた兄妹のおはなし。 (彼らが逃げ切れたかはわからない。) (物語はここまでしか書かれなかったのだから!) by 070312 |