私の部屋は二階だ。
蒸し暑い部屋の窓をあければ、
涼しい風と共に星の瞬く星空が望める。

毎年この七月七日
七夕の夜に、
いつもと同じように窓をあければ、
十年前から変わらぬ君の声が私を捉えるんだ。




「あーかりちゃーん!」


夕暮れ時、窓の下で、夕焼け色に染まった幼馴染は手を振っていた。
満面の笑みの彼女の手には大きな笹を抱えている。


「お父さんが今年も貰って来たのー!
一緒に短冊かこうよー!」


利津は華奢な体で大きな笹の竹を振るう。
案の定、ふらついた彼女に苦笑して、
私はすぐに行く、と慌てて階段を駆け下りた。


「本当に大きな笹。おじさん、今年も随分張り切ったね」

「でしょ!ホントなに考えてんだろうね、うちのお父さんは」


背の高い笹は、利津の家の前に立てかけられている。
私たちはその笹の前で短冊を書くのだ。
次期に近所の子ども達が、短冊を吊るしにやってくるだろう。
それは昔から変わらない風景で、私は懐かしさに眩暈を覚えた。







「あーかりちゃーん!たんざくかこうよー!」

七夕の日には、いつも利津が私を呼びに来た。
幼い利津は今も昔も変わらずに、楽しげに飛び跳ねる。

「ねえしってる?りっちゃん、たんざくっていちばんたかい
はっぱにつけたほうがかみさまがみやすいんだって!」

「じゃあどっちがたかくにつけられるかきょうそうね!」


ちいさな背では天辺に届くわけはなく、
ふたりで精一杯腕をのばして短冊を飾る。


まだ現実の厳しさも、なにも知らないあの頃。
毎日があの天の川のようにきらきらしてて、楽しかったあの頃。
懐かしさが胸にこみ上げる。







「灯ちゃんできた?」

「ん、一応」


吊るそうか、と立ち上がった私に茶目っぽく利津は言った。
相手の願い事は決して見ないのがお約束事。



「ね、高いところにつけないと、願い事は叶わないんだよ」

「じゃあどっちが高いか競争だ」


その会話も懐かしく、
それを利津が覚えていたことを嬉しく思った。


天の川、星空の下。
そうして、また、精一杯手を伸ばして君は短冊を飾るのだ。




竹 ふたりで ぇ比べ
(利津といつまでも親友でいられますように!)
(灯ちゃんがずっと仲良くしてくれますように!)







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おおきくなっても、ずっとこのように
ふたり
まるで姉妹のようにいられたならば


織姫と彦星に祈りを


070530(*2007七夕記念)